headless 曰く、
開ける前の缶ビールを落としたり、振ったりしてしまった場合でも缶を軽く叩いてから開ければ噴き出しを防ぐことができるなどとも言われるが、これが事実かどうかを確認するためデンマークの研究グループが缶ビール1,000本以上を使用した調査を実施したそうだ(論文: PDF、 The Registerの記事)。
論文によると、缶ビールを開けた時に吹きこぼれてしまえば消費可能な量が減少して経済的な損失が発生するうえ、周囲が汚れて社会的にも損失が発生するため、吹きこぼれないようにする方法は非常に重要だという。
ビールの液体には高圧で二酸化炭素が溶解しているが、開ける前の缶が衝撃を受けると缶の内側に触れた部分で二酸化炭素の気泡が発生する。この状態で缶を開けると圧力が低下して二酸化炭素が過飽和状態になるので気泡が急速に成長し、噴き出してしまう。缶を軽く叩くと噴き出しにくくなるという仮説は、缶を軽く叩けば缶の内側に付着した気泡がはがれて缶上部の空間へ移動するため、缶を開けても噴き出しにくくなる、という理論的な根拠を持つが、厳密な評価が行われたことはないとのこと。
研究ではカールスバーグから提供された330ml入りの缶ビール1,031本をランダムに4つのグループ(振らない+叩かない、振る+叩かない。振らない+叩く、振る+叩く)に振り分け、一晩4℃で冷やしたものを使用している。振る方の2グループは3~4缶ずつ、440rpmに設定した機械実験用シェーカーUnimax 2000に2分間かけている。これにより、自転車で10分間運ぶという、デンマークで一般的なビールの運搬法を再現できたとのこと。次に別のチームが缶を拭いて重量を測定後に(叩くグループの缶は叩いてから)開け、こぼれた後の重量を測定する。叩くかどうかを指定するラベルは缶の横に貼られているが、振るかどうかの指定は缶底に貼られており、缶を開ける人には振ったかどうかがわからないようになっている。
データ収集エラーがあった缶を除いて1,000缶分のデータが残り、うち振らなかった缶が507缶、振った缶が493缶。叩くよう指定された缶は振った缶の49%、振らかなった缶の50%だという。缶を振ってから開けるまでの時間は15秒~382秒(中央値94秒)。開けた時にこぼれたビールの量は振った缶で中央値3.45g、振らなかった缶で0.51gとなったが、缶を叩くことの効果はほとんどなかったようだ。振った缶では叩いた場合にこぼれたビールが叩かなかった場合と比べて中央値で0.159g少なくなったが、振らなかった缶では0.085g多くなっている。
このような結果になった理由として、叩いたエネルギーや叩いてから開けるまでの時間が気泡を缶上部へ浮上させるには不十分であることが挙げられている。また、気泡の多くが缶の内側に付着するという仮説の前提が崩れている可能性や、ビールの泡にクリーミーさを与える成分が気泡の上昇を防いでいる可能性も指摘している。今後の課題としては、ビール以外の炭酸飲料も含め、振ってから開けても噴き出さない程度に落ち着くまでの時間を調査することや、振り方を弱くした場合には叩いた時の効果が異なるかどうかの調査などを挙げている。