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15052 story

Lisa Office Systemレビュー@Low End Mac 15

ストーリー by Acanthopanax
温故知新 部門より

airhead 曰く、

Arachelian氏インタビューでも大きく取り上げられているLisa Office System (LOS) のUIに関して、今回はLisaエミュ/LOSレビュー記事についてもあわせて許諾いただいたので、ここにお届けします。これをもとにデスクトップ環境のありかたを考えてみるのも一興ではないでしょうか。

(以下、airhead氏による翻訳)

Lisaエミュレータがリリースされる――OS XおよびWindowsユーザーがApple Lisaを体験することも可能に
Ted Hodges - 2007.02.27

8年前、僕がまだ11歳のとき、僕はたまたまLisa Emulator Projectに出くわした。

それまでLisaについて聞いたことはあったが、Lisa Office System (LOS) を使う機会は一度もなかった。その理由は、そのエミュレータプロジェクトに動作するLisaエミュレータは無く、他のどこを探しても無かったからだ――今の今までは。

そう、Lisa Emulator Projectの創始者Ray ArachelianがついにLisaエミュレータを動作するまでに作り上げたんだ(この経緯について詳しくはLisaエミュレータ作者、Ray Arachelianインタビューをご覧いただきたい)。

他の多くの人たちと同じく、僕はこのエミュレータの稼動を何年も待ちつづけてきており、さっそくこのLisaエミュレータをダウンロードして、ROMを入手し、LOSの入ったメディアを見つけ出した。この両方がエミュレータを動作させるために必要となる。

用意したのはLOS 7/7 Version 3.1で、これをProfileディスクイメージにインストールし、仮想Lisaを起動してみた。

それではLOSの機能をいくつか紹介していこう――説明のためにスクリーンショットも十数枚用意した。

Lisaを起動して最初に目にするのが次の画面だ:

ご存知だろうか? MicrosoftがWindowsを作るにあたって、Macから盗んだものでないものが一つだけある。砂時計カーソルだ(クラシックMac OSでは腕時計が使われていた)。いやいや、実は彼らはWindows砂時計をLisaから盗んでいたんだ。

それはさておき、起動プロセスはこのくらいにして、本編へと入っていこう。

まず最初に目に付くのは、他のコンピュータとはまったく異なるLisaのふるまいだ。

例を挙げると、もっと最近のGUIで普段やっているように、まずLisaWriteやLisaDrawやその他のアプリケーションを立ち上げ、作ろうとしている文書のタイプを選択し、それから文書を作成し、しかる後にタイトルをつけて保存、といった手順を踏むことはない。Lisaでは(LisaDraw PaperやLisaWrite Paperといった)便箋をダブルクリックして、そこから一枚引っぺがすことから始める。

そして今切り取ったばかりの一枚の紙にタイトルをつける。

そしてその紙を開いて、おもむろに書き始める(あるいは何か描くとか、ご自由に)。

なぜ最近のオペレーティングシステムはこのようにしないのかと不思議に思えるぐらいだ――僕にとってはこの方が理にかなっている。

なぜ僕が時計を95年2月25日に合わせているのかと不思議に思われるかもしれない。ええとつまり、Lisaは1995年で時を刻むのを止めてしまうんだ。(まあ少なくとも、LisaはY2K問題とは無縁だったのだ。)

Lisaのもう一つの特徴はプリエンプティブ・マルチタスクで、メニューを開きっぱなしにしても、システムの他の部分が止まったりしない。

その通り――プリエンプティブ・マルチタスクは、1983年に登場したLisaが標準で備えていた機能だった。(Macでは2001年にOS Xが登場するまで取り入れられなかった。)

さらにLisaで目に留まるのは、終了という選択肢が無いことだ。全部片付ける (Set Aside Everything) 、編集中の文書を片付ける (Set Aside "(document title)") 、保存して続ける (Save & Continue) 、保存して仕舞う (Save & Put Away) 、こういったことはできるが、終了 (Quit) はできない。

終了できない理由は、全てのプログラムが常に開いていることにある。LOSは徹底して文書志向になっているんだ。

これに加えて良い点は、Lisaに何かを保存せよといちいち指示する必要がないことにある。保存せよと指示した場合には参照ファイルが作成され、後々そこに差し戻す (revert) ことができる。

例えば、先週から作業を続けている文書があり、最後に保存したのは2日前、という場合を想像して欲しい。

Lisaは最後に保存してからのあらゆる変更を把握しており、文書を片付けるたびに、わざわざ問い合わせることもなくそれを更新してゆく。

でも文書で失敗してしまった場合にはどうすればいいのか? ただ単にLisaに、直前の版に差し戻す (Revert to Previous Version) ように指示するだけでいいんだ! 実際の話、Lisaに何かを保存させたくなるような理由は、後から直前の版に差し戻すことができるように、ということの他に見当たらない。

この差し戻し機能を除けば、文書を保存せねばならないような理由は全くない。自動だから。

それとは別の、僕がとても気に入っている機能を挙げてみよう。あるディスク内の文書を開いている最中にディスクを取り出そうとした場合、Lisaは文書を(複数あってもすべて)保存し、それらを閉じ、そうして初めてディスクを排出する。

これは、誰かに(例えば上司に)別のディスクを渡されて調べておけと言われたような場合に重宝するだろう。

さらに最初に作業していたディスクを再びLisaに入れれば、Lisaは直ちに作業していた文書を自動的に、ディスクを取り出す直前の状態で開きなおしてくれる。

これと同じことは、電源ボタンを押した場合にも起こる。

開いている文書の数か20あって電源ボタンを押したとしても、Lisaはそれらを全て保存し、片付け、全てを仕舞いこんで、そうして初めて自身の電源を切る。

再びLisaの電源を入れれば、直ちにLisaは全てを電源を切る直前の状態で開きなおしてくれる。この動作はMacのスリープに似ているが、たった一つだけ、全ての文書が保存されるという違いがある。

Lisaに文書の複製を指示した場合の動作も、気に入った点の一つだ。複製したいと思うファイルそっくりの点滅するアイコンが作られる。ファイルの複製の前に、まずこの点滅するアイコンを複製したい場所に事前にドラッグしておかなければならない。

想像するにこれは、1983年当時はディスクスペースが限られており、ファイルを複製するにしてもそのディスクにそれだけの空きがない場合もあったためだろう。

ちょっと変わった部分もある――が、現実世界でのことを考えれば驚くにはあたらない――あるプログラムを、それがあるディスクから別のディスクへドラッグした場合、Lisaはファイルをコピーし終えると元のディスクからそのプログラムを削除してしまう。これは奇妙に思えるかもしれないが、考えてみれば実生活で現実のファイルをあるフォルダから別のフォルダに移す場合にしても、ファイルは元あったフォルダに残ってたりはしない。

Lisaエミュレータ

このエミュレータはなんてそっくりなんだと、皆驚かれることと思う。いやまったく、これはすごくよく出来ている。

UIをエミュレートするだけにとどまらず、電源ランプやディスクドライブも含めたコンピュータ全体がエミュレートされている。このエミュレータを実行すれば、誰もがLisaを目の当たりにしているような感覚を覚えるだろう!

この記事を書いている現在、ディスクドライブのモーター音とディスクのアニメーションが機能するのはWindows版のみで、今のところエミュレータにドキュメンテーションは付属していない(訳注:その後beta版と同時にドキュメンテーション草案のPDFがリリースされた)。

バグも存在し、プログラムによってはスクロールバーの矢印が欠けることがある。Deskメニューの誤動作を引き起こすバグもあるようだ。(デスクトップ上の全てのアイテムを表示させるためにデスクメニューが用意されている。)

とはいえ、このエミュレータに関して僕のところで発生している唯一の大きな問題は、僕の733MHz G4では動作がかなり遅いということだ(エミュレータのレポートでは3Mhzで、Lisaのゆったりとしたハードウェア速度5MHzの、わずか3/5でしかない)。Ray Arachelianの確約したところでは、来週に予定されている次のリリースではG4マシンでもずっと速く動作するようになるとのこと。

その一方でWindows版はなかなかの速さで動作する。したがってWindowsマシンをお持ちであれば、当面はそちらでエミュレータを稼動することをお勧めする(「かなり」速いMacを持っていない限り)。

さて、今回のLOS検証記事は楽しんでいただけただろうか。質問やコメントがあれば気軽に電子メールを送って欲しい。おっと、チャンネルはそのままで、現在Ray Arachelianにインタビューしている真っ最中で、Lisa Emulator Projectについてさらに詳しくでお伝えできるはずだから。

"Lisa Emulator Released, Allows OS X and Windows Users to Experience Apple's Lisa" by Ted Hodges, Feb. 27, 2007.
Vintage Mac Living articles copyright ©2005-07 by Ted Hodges. Entire Low End Mac site copyright ©1997-2007 by Cobweb Publishing, Inc., unless otherwise noted. All rights reserved. Japanese translation published under permission from copyright holders.

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  • LisaでこれだけやってるとなるとMacのUIは退化し続けてる事になるわけだが...理由に興味があるトコロ。
    • by juan (3871) on 2007年04月02日 15時13分 (#1136218) ホームページ 日記

      LisaでこれだけやってるとなるとMacのUIは退化し続けてる事になるわけだが...理由に興味があるトコロ。


      退化し続けているというか、最初にこういう先進的なアイデアをばっさり切り落としてしまったので、後々なにやっても元には戻れなかったということではないかと思います。

      Lisaの回路はMacよりずっと複雑で、メモリも1MBありました。値段も1万ドル対2400ドルです。64MBのROMと128KBのRAMで動かすOSにLisaと同じ機能を持たせるのは難しかったでしょう。

      MacにはMMUがなかったので、狭いメモリ領域ををメモリマネージャーがちょこちょこブロック移動させたり、パージしたり、涙ぐましい努力とトリックの塊です。68000では使われないアドレスの上位8ビットにフラグをつめていたりしてメモリの節約をしていたので、後に32bit対応に苦労したし、狭いメモリをアプリケーションが全部使う仕様だったために、マルチタスクへの移行もさんざんでした。

      アプリケーション志向から書類志向への転換をOpenDocで図るも、結局ものにならず、今に至っています。
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      • >退化し続けているというか、最初にこういう先進的なアイデアをばっさり切り落としてしまったので、後々なにやっても元には戻れなかったということではないかと思います。

        んー。Jobsらしくない(w
        # メモリがネェ。とコキ下ろしたわけだが。

        でも、退化し続けているというのはそれだけじゃないけどね。一番大きな変化はその点だけど。
        System7以降はMacらしくなくなってったとか、そういうのも含めて。
        # モデルじゃなくてクオリア的な部分が変質したのかも知れないな。
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        • by juan (3871) on 2007年04月02日 17時43分 (#1136255) ホームページ 日記
          Lisaプロジェクトを追い出されたジョブズが可愛さあまって憎さ百倍でラスキンのマッキントッシュプロジェクトを乗っ取って、「あんな高価でゴテゴテのビジネスマシーンなんぞダメダメ、これからはMacだよ」と、少人数体制で海賊気取って作り上げたのがMacだから、アンチLisa的なマシンにしたかったってのもあるのではないかと。
          メモリについてはどういうわけだか128KBで十分と思っていたふしがあって、現場の技術者が後々ふやせるようにしときましょうと提案しても蹴っていたとか。

          ジョブズって、AltoのGUIには惚れまくっていたけど、Smalltalkみたいな物にはてんで興味がなかったようだし、要するにかっちょいいアイコンとメニューとウィンドウがあればよかったのではないかなあ。

          ジョブズもスカリーも結構夢見る経営者って感じだけど、ジョブズは思い込んだら周りが見えなくなるし、スカリーはビジョンを実行するのに腰が引ける、彼らが去った後もアップルには夢見る研究者や技術者がいっぱいいたわけですけど、彼らのアイデアをうまく取捨選択してまとめ上げる人がいなくなってしまった。QuickDrawGXやらOpenDocやらQuickDraw3Dやらがばらばらに開発されてSystemにうまく統合されず、一方QuickTimeも動画以外のいろんなジャンルに手を出し、そのうちHyperCardをQuickTime上で実現するよとか、ちょっとおかしなことを言い出したりして。

          よく潰れなかったものです。
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          • ふむぅ...Jobsが張本人だったか。

            >要するにかっちょいいアイコンとメニューとウィンドウがあればよかった

            うはは。かもしれん。

            >HyperCardをQuickTime上で実現

            できることレベルで言うとFlashみたいなもんですな。
            なんつーか、個々の要素は良かったんだけど誰も「システムイメージ」を持ってなかったような気がする。
            OpenDocだってOLEと大して違わなくなってたし。
            # その頃の「Appleは遺産を食ってるだけ」という印象はそんなに間違ってなかったんだなぁ...。
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    • by ZYT (14695) on 2007年04月02日 13時11分 (#1136177) 日記
      ドキュメント周りでは、B-Tronの実身仮身モデルがこういったUIだった気がするんですが、
      決して使いやすいものではなかったと記憶しています。

      「慣れ」というのかも知れませんが。
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  • Lisaのマルチタスクについて、Ted Hodges氏はプリエンプティブ・マルチタスクであるとしているのですが、Wikipediaの記述 [wikipedia.org]だと(プリエンプティブではなく)協調的マルチタスクとしています。そしてさらに脚注 [wikipedia.org]で、"It is a common misconception that the Lisa OS used preemptive multitasking." (Lisa OSはプリエンプティブ・マルチタスクであるとよく誤解されている)と指摘しています。このあたり実際のところはどうなのでしょうか。

    • 私もちょっと気になって探してみたんですが、ウェブでは技術的根拠を挙げての説明は見当たらないですね。プリエンプティブとする根拠にしても、GUIdebook > Videos > Apple Lisa at CHI 98 [guidebookgallery.org]にある内容(講演動画・書き起こし)で、Lisa開発者の一人Rod PerkinsがLisaの概要を述べる中でプリエンプティブだと言ってるのを見つけたぐらい。

      So, the software that was in the machine really tried to address some of the major issues about how the machine would be robust and how we’d operate in this highly interruptive environment. So, first of all it was virtual memory underneath. We had a preemptive multitasking operating system, so it was very easy for things to switch back and forth. We also had a redundant file system underneath, which meant that the file system itself could take simple hits from either bad floppy disk or bad disk blocks, and still be robust enough to get the person’s data back.

      (見出し「Hardware and operating system」の最後の段落)

      Wikipediaの「Lisa OS」という記述自体、本当にLisa Office Systemを指しているのか怪しいような、実はLisa Monitorとか別のOSのことなんじゃないかという気もするんですが、実際のところどうなんでしょう。

      ところでこの講演動画、ファイルサイズの小さいDigiBarn TV [digibarn.com]版(122MB、全45:47)の方で見たんですが、もう一人の講演者・開発者Frank LudolphがTed君のレビューで説明されている機能を実演しており(09:30-35:00あたり)、こちらも参考になると思います。

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      • by juan (3871) on 2007年04月04日 16時20分 (#1137249) ホームページ 日記
        LisaのOSについて詳しくはないのですが、調べてみるとLisa Operating Systemの上にLisa Office System やWorkshopがシェルとして乗る形になっているようです。
        で、Operating Systemのリファレンス [sunder.net]を見ると、実行中のプロセスがCPUを失うのは以下の場合となっています。
        1. 実行中のプロセスがブロックされた場合(I/O中など)。
        2. 実行中のプロセスが自分自身の優先度を下げるか、他の待機中プロセスの優先度を自分より高くした場合。
        3. 実行中のプロセスが他のプロセスにCPUを明け渡した場合。
        4. 実行中のプロセスが、自分より優先度の高いプロセスをアクティベートするか、自分自身をサスペンドした場合。
        5. 他に優先度の高いプロセスが待機しているときに実行中のプロセスがOSシステムコールを実行した場合。
        6. 実行中のプロセスのコードがスワップされた場合、またはそのスタックが拡張された場合。

        Operating Systemは上の場合を除き、実行中のプロセスから強制的にCPUを取り上げることはできないので、バックグラウンドプロセスはYIELD_CPUコールをまめに使う必要があると書かれています。

        MultiFinder導入の頃のMacに比べればきめ細かな制御が可能なようですが、協調的マルチタスクのようですね。
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      • おっと、変な例を書いてしまった。Lisa Monitorがマルチタスクかどうかは知らないです。

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  • by Anonymous Coward on 2007年04月02日 13時56分 (#1136196)
    秋葉の某店の棚で ジャンク アンティークコンピュータの山に埋もれていたと思ったけど、あれって動くのかしらん
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人生の大半の問題はスルー力で解決する -- スルー力研究専門家

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