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テクノロジー

1960年代初めに開発された物語自動生成システム

タレコミ by headless
headless 曰く、
現代ではコンピューターに物語を生成させるさまざまな試みが行われているが、1960年代初めに言語学者Joseph E. Grimes氏が開発したコンピューターによる物語自動生成システムについて、本人からの聞き取りも含めた幅広い調査結果の論文を米カリフォルニア大学サンタクルーズ校のJames Ryan氏が発表している(論文The Registerの記事)。

現在、最古の物語自動生成システムとして広く知られているのは1971年に報告された言語学者Sheldon Klein氏によるミステリー小説自動生成システムだが、Grimes氏は1960年または1961年の夏にメキシコ国立自治大学のIBM 650を使用して物語自動生成システムの開発を始めていたそうだ。システムは機械語で書かれていたが、のちに使用したIBM 1401(メキシコ国立自治大学のものと米オクラホマ大学のものを使用)ではFORTRANでプログラミングしたようだ。

Grimes氏は研究を発表しておらず、資料はほとんど残っていないが、研究を知ったIBMメキシコが1963年に取材し、IBMの「Business Machines」誌に掲載されていたそうだ。Grimes氏のシステムはVladimir Proppが「民話の形態学」で分類した物語の要素(31種の機能と7種の登場人物)を用い、モンテカルロ法により選択した要素を組み合わせて自然言語(英語またはスペイン語)による文を生成する。研究の目的は物語の生成そのものではなく、生成した物語を言語研究のためのツールにすることだったという。

現在唯一残されている出力結果は、同誌に掲載されていたもので、

A LION HAS BEEN IN TROUBLE FOR A LONG TIME. A DOG STEALS SOMETHING THAT BELONGS TO THE LION. THE HERO, LION, KILLS THE VILLAIN, DOG, WITHOUT A FIGHT. THE HERO, LION, THUS IS ABLE TO GET HIS POSSESSION BACK.
(ライオンは長らく問題を抱えていた。犬がライオンの持ち物を盗むのだ。英雄のライオンは戦わずして悪漢の犬を殺す。かくして英雄のライオンは彼の持ち物を取り返すことができた。)

といったものだ。「a lion」→「the lion」→「the hero, lion」というような参照表現や、「thus」で結論を導く点などが当時としては最新の自然言語生成であったとみられる。しかし、退屈な物語しか生成できず、Grimes氏は他の分野で成功していたことから、プロジェクトは終了することになる。

論文では1961年にCBSテレビの番組で紹介されたMITの「SAGA II」が最も古い物語自動生成システムの可能性が高いとしつつ、SAGA IIは西部劇の1場面(のト書き)を生成するものであり、完結した物語を自動生成するシステムとしてはGrimes氏のシステムが最古だと述べている。また、Proppの構造を使用した最古のシステムでもあるとのことだ。

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